【親なきあと準備ガイド】シリーズのステップ3は、『同じ立場の親の声を知る』に続き『お金・住まい・ケアの対策を考える』です。
「親なきあと」に不安を抱える親御さんの多くが、頭を悩ませるのが「お金・住まい・日常生活のケア」です。この3つは密接に結びついており、どれか一つでも不確かだと、将来の生活に対する不安が大きくなります。
このステップでは、それぞれの項目について親としてできる準備と具体策を紹介します。
🔶 お金の準備と対策
① 障害年金・各種手当の確認
- **障害年金(基礎・厚生)**は、障害者の主たる収入源となるもの。支給要件や金額を確認しておくことが第一歩です。
- 特別障害者手当、福祉手当、児童扶養手当など、併用できる制度も見直しましょう。
📝事例:
「息子が20歳になったとき、障害基礎年金の申請をして、今は月6万6千円ほど受給。家計の支えになっています」
🔗 参考リンク:
- 日本年金機構「障害年金のご案内」https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/
- 厚労省「手当・給付金制度一覧」https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/shougaisha/
② 親の財産の残し方(相続・贈与・信託)
- 遺言書:誰に、何を、どのように残すかを明文化する
- 家族信託:財産の管理・処分を家族(受託者)に託す方法。障害のある子の生活費管理に有効
- 生前贈与:必要な時期に必要な分を、税務の範囲内で贈与する方法
📝事例:
「家族信託で、妹が受託者となり、兄(障害あり)の生活費を管理。遺言ではなく、生前から支援体制を整えられた」
🔗 参考リンク:
- 一般社団法人家族信託普及協会 https://kazokushintaku.org/
- 公証人連合会(公正証書遺言)https://www.koshonin.gr.jp/
③ 成年後見制度の検討
- 判断能力が低下した場合でも、法的に契約や財産管理が可能になる制度。
- 家庭裁判所の選任により後見人がつく「法定後見」と、あらかじめ契約する「任意後見」があります。
📝事例:
「うちの子は知的障害があり、成人後に法定後見制度を利用しました。定期報告義務もあるが安心感がある」
🔗 参考リンク:
- 法務省 成年後見制度 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00002.html
🔷 住まいの準備と選択肢
① グループホーム・入所施設・親子同居型
- 地域密着型グループホーム(共同生活援助)や、重度対応の入所施設など、本人の障害特性に応じて検討。
- 「親子入居型住宅」や「地域の見守り付き賃貸」なども最近増加傾向。
📝事例:
「週に4日だけグループホームに通い、週末は実家で過ごす“段階的な自立”を進めています」
🔗 参考リンク:
- 厚労省 地域生活支援施策 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148789.html
② 相談支援専門員・地域生活支援センターの活用
- 本人や家族の生活を支える専門職として、「計画相談支援員」や「地域生活支援センター」などがあり、住まい探しやサービス導入の相談が可能です。
📝事例:
「住宅支援の相談に地域生活支援センターを利用し、家賃補助と支援付き住宅の情報を得られました」
🧭 ケア体制・日常的な見守りの整備
① 家族・親族との役割分担
- 兄弟や親戚に頼る場合は、事前に「役割」と「負担の範囲」を明確にしておくことが重要です。
② 福祉サービスの導入
- 訪問介護、生活援助、通所サービス(就労・生活介護)などを、親が元気なうちから導入し慣らしておくことが有効です。
③ 緊急連絡先や「生活カルテ」の整備
- 緊急時に誰が連絡を受け、何をすればよいかを明記
- 医療・支援機関の連絡先/服薬・通院歴/日課や好みなどをまとめた「生活カルテ」は、支援の引継ぎに非常に有効です
📝事例:
「生活カルテをA4用紙1枚にまとめ、ヘルパーさんと家族共有。災害時にも役立ちました」
📘 まとめ:親が元気な今こそ“整える”タイミング
- お金は「見える化」と「仕組み化」
- 住まいは「段階的な選択」と「支援の手配」
- ケアは「人と制度の組み合わせ」
この3つを少しずつ進めることで、親も子も「安心の見通し」を持つことができます。
次回は「ステップ4:具体的に『託せる人』を探す」に進みます。
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